詰将棋のルール・基礎編~これだけは知っておきたい基本中の基本~


この記事では、詰将棋のルールの中でも、基礎的、かつ、非常に重要な内容を、実例を交えながら説明していきます。詰将棋の初心者の方にとっては必見の内容となりますので、ぜひお読みいただければ幸いです。

また、詰将棋に慣れた方の中には、「ルール知らないけど、ほとんど答え間違えたことなんかないよ」という方もいらっしゃるかもしれません。そのような方は、おそらく、多くの詰将棋を解くうちに、正しいルールを無意識のうちに理解しているのだと思います。そういった方であっても、この記事を読むことで、今まで「なんとなく」理解していたことが、「そういうことだったのか」とわかり、新しい発見もあるかもしれませんので、「簡単な内容」だとバカにせず、流し読みでもいいのでお読みいただければ幸いです。

詰将棋の基礎ルール

詰将棋のルール全体は、以下の記事で紹介しています。

詰将棋のルール一覧
詰将棋を解いたことがある方は 「詰将棋が難しすぎて解けない。」 「解けたと思ったけど、相手の受けの好手を見逃して、間違えてしまっ...

今回は、その中でも「基本中の基本」と称した、以下のルールについて紹介します。

  • 先手(攻方)は、王手の連続で後手(以下、「玉方」)の玉を詰ます。
  • 玉方は、必ず、王手を回避する手を指し、回避する手がなくなった時点で「詰み」とする。
  • 駒の動かし方や禁じ手は、通常の将棋と同じである。
  • 攻方は、途中で取った駒を持ち駒として使用できる。
  • 玉方は、駒の1セットのうち、玉、攻方の持ち駒、盤上の駒を除く、全ての駒を合駒として利用できる。
  • 玉方は、無駄な合駒はしてはならない。

先手(攻方)は、王手の連続で後手(以下、「玉方」)の玉を詰ます。玉方は、必ず、王手を回避する手を指すし、回避する手がなくなった時点で「詰み」とする。

これらのルールは、詰将棋の「ルール」というよりは「定義」と言っても良いものです。攻方が王手をかけないような図面(「次の一手」問題や「必至」問題等)は「詰将棋」とは言えません。また、玉方がそれを回避する手段をとるのも当然で、王手を放置してしまっては、詰む・詰まない以前の問題になってしまいます。

また、詰ますことが目的のゲームですので、攻方はどんな王手をかけてもいいわけではなく、「詰まないような王手」は必ず不正解となります。

実戦においては、王手をかけられている側が、詰みを読み切れば「投了」してしまうことはよくあります。しかし、詰将棋に「投了」はありません。王手を回避する手がなくなるまでは指し続けなければいけません。ルール上、回避する手段がなくなった場合に、「詰み」とみなし、それまでの手順が正解であれば、詰将棋が「解けた」ことになります。

また、ルールの文章の中に「攻方」「玉方」という言葉が出てきました。詰将棋については、「先手」や「後手」という言葉は使わず、代わりに、「攻方」(せめかた)、「玉方」(ぎょくかた)という言葉を使うのが一般的になっています。本ブログでも、詰将棋に関する記事は、全て「攻方」「玉方」という表現に統一させていただきますが、意味としては「先手」「後手」とほとんど変わりません。「攻方」が1手目や3手目を指し、「玉方」が2手目や4手目等を指します。「攻方」の玉を詰ませて終了となるので、詰将棋の手数は必ず奇数となります。

駒の動かし方や禁じ手は、通常の将棋と同じである。

まず、駒の動かし方は、当然ながら通常の指し将棋と同じです。また、駒の「成」についても同様です。

また、禁じ手ですが、通常の指し将棋で禁じ手となるような手は、以下のようなものがあります。
・二歩
・打歩詰め
・行き所のない駒(=1段目の歩桂香、2段目の桂)
・王手放置・自爆手
・連続王手の千日手(※注意点あり)
・動けないところに動かす、成れないところに成る、自分の駒を取る等

これらに該当するような指し手は、詰将棋においても指すことはできません。攻方はもちろん、玉方も指すことはできません。

この中で、「打歩詰め」は、実際の指し将棋ではめったに登場することはありませんが、詰将棋においては「打歩詰め」の局面は頻繁に登場します。将棋をある程度指せる方でも、打歩詰めのルールを忘れてしまっている方も多くいらっしゃるかもしれませんが、詰将棋を解く場合は、打歩詰めのルールは常に頭に入れておく必要があります。

例えば、図1の詰将棋をご覧ください。

図1

図1

この図で▲12歩と打つ手が、打歩詰めの反則となります。打歩詰めにならないためにひと工夫が必要となります。本作以外にも打歩詰めを打開するテクニックは様々なものがあり、打歩詰めのルールがなければ、現状発表されている大多数の詰将棋が、作品として成立しなくなってしまうと言っても、過言ではありません。

また、「連続王手の千日手」については、禁止となる条件が実際の指し将棋と異なりますが、この点は別記事で記載します。

※連続王手の千日手の絡む手順が発生する場合のルールは、以下の記事に記載しております。

詰将棋のルール・上級編~攻方非限定・迂回手順等~
これまで、詰将棋の基礎的なルールや、玉方の最善手の選択方法などについて、紹介してきました。 今回のテーマは、「攻方に詰...

※図1の解答:▲33馬△同桂▲12歩△21玉▲32銀成 まで5手詰。3手目の局面では▲12歩が打歩詰めの反則ではない点が重要です。

攻め方は、途中で取った駒を持ち駒として使用できる。

詰将棋の問題には、攻方の持ち駒が設定されている問題も多数ありますが、仮に持ち駒がなかったとしても、王手をかけながら取った駒はいつでも使用することができます。

例えば図2をご覧ください。

図2

図2

攻方には現状持ち駒はありませんが、▲11竜と香を取り、△同銀に▲16香(図3)と、取った香で王手をして詰ますことができます。駒を取って使うのは、詰将棋でも通常の指し将棋でも、攻めの基本になるので、取った駒の存在を忘れないようにしましょう。

図3

図3

玉方は、駒の1セットのうち、玉、攻方の持ち駒、盤上の駒を除く、全ての駒を合駒として利用できる。

図4の詰将棋をご覧ください。

図4

図4

図4から、▲35馬とした局面(図5)を考えてみます。

図5

図5

ここから盤上の駒だけで受けるとなると、玉を逃げる手はないので、△24歩と突くしかありません。しかし、これだと▲同馬とされて詰んでしまいます。持ち駒の銀・香を使うまでもなく詰んでしまいましたが、本当に正しい受け方をしているのでしょうか?

実は、△24歩と受けた手では、他の受け方があるのです。それが、持ち駒使用のルールです。玉方は、盤上と先手の持ち駒で使われている駒以外、つまり、この場合は、飛角金銀桂香の6種類の駒を24の地点に打って受けることができます(△24歩打は二歩なのでダメです)。

たとえば、△24桂と受けたらどうでしょうか?(図6)

図6

図6

図6は、王手はしばらく続きますが、結論だけ言うと、玉方が最善を尽くせば詰みません。つまり、初手▲35馬は正解手順ではなかった、ということになります。

最初のうちは、玉方が合駒を打てることを見落として、詰んだと錯覚してしまう事がありがちなので、玉方が合駒を使えるというルールは、意識するようにしましょう。

図5の場合は、盤上で使われている駒が少ないため、全ての駒を合駒として打つことができましたが、例えば盤上に金が4枚いたとしたら、玉方は金を打って受けることはできません。将棋駒の1セットに、金は5枚存在しないためです。入門者向けの問題にはそのような問題はまず出題されませんが、上級者向けになってくると、合駒として打てる駒が制限されている問題も多数ありますので、何でも打っていいわけではなく、「残りの駒だけ使える」と覚えておきましょう。

※図4の解答:▲14香△同桂▲22銀 まで3手詰。

玉方は、無駄な合駒はしてはならない。

前項で、玉方は自由に合駒できると書きましたが、合駒してはいけないケースも存在します。図7をご覧ください。

図7

図7

▲51竜と王手をした局面です。この図で玉方が受けるとしたらどのような手があるでしょうか?

△41歩と合駒をするのはどうでしょうか?(図8)。

図8

図8

前項で、「玉方は盤上にない駒を合駒として使用できる」というルールを説明しましたので、△41歩という受け手が有効であるように思われるかもしれません。しかし、実際には△41歩と打っても、▲41同竜とされて、詰みを逃れることはできませんね。

実際の指し将棋においては、△41歩のような手は反則にはならないため、指しても構いません。もしかしたら先手が間違って、▲41同歩成としてくれて助かるかもしれませんし、切れ負けルールの対局であれば手数を伸ばすことで、時間切れが狙えるかもしれないので、全く意味のない手とは言い切れないでしょう。

しかし、詰将棋においては、△41歩のように、単に取られるだけで何の意味もない合駒は、指してはいけない決まりになっています。よって、「▲51竜△41歩▲同竜」で詰み、ではなく、図7の「▲51竜」の時点で打ち切って「詰み」、という扱いになります。ルール上は指せる手があるのに、「詰み」と認定されるのは、このように「無駄合」の場合のみとなっています。

余談ですが、このように、ルール上玉方が指せる手があるが、その合駒をタダで取られて詰んでしまう局面の事を、専門用語で「透かし詰め」と言います。指し将棋ではまず用いられることのない詰将棋専門の用語で、覚える必要はありません(笑)。

なお、「無駄な合駒の禁止」は最終手に限ったことではありません。例えば、図9をご覧ください。

図9

図9

この詰将棋の正解手順は▲41馬△13玉▲14金までの3手詰めですが、▲41馬に対して、△32桂(図10)等と合駒するのは、▲32同馬△13玉▲14金とされて、合駒をした手が何の意味を持ちません。

図10

図10

したがって、△32桂のような手は玉方の手としては不正解となります。

図8や図10は、いずれも、タダで取られるだけで何の意味もない合駒でした。それならば、タダで取られる合駒は全て意味がないのでしょうか?

実は、そうではないケースもあります。「中合」(ちゅうあい)というテクニックを使うケースがそれに該当するのですが、本記事は入門的な内容を紹介する記事としたいため、中合についてはまた別の機会に説明させていただきます。更に、無駄合か、そうでない合駒(「有効合」という)か判断しにくいケースも稀に登場します。しかし、初級者向けの詰将棋でそのような局面が登場することはまずありませんので、ここでは割愛させていただきます。

まとめ

本記事では、詰将棋を解くにあたり、絶対に知っておかないといけない基礎的なルールを記載しました。

玉方、攻方の言葉の意味、王手の連続で詰ますことや、指し将棋の反則は詰将棋でも反則であること、攻方と玉方のそれぞれについての持ち駒の使用ルールについて説明しました。

しかし、本項では、玉方が複数の手を選べる場合にどれを選択すべきか等、他にも重要なルールをまだ説明しておりません。それらのルールについては以下の記事で記載しております。

詰将棋のルール・中級編~玉方の最善手は?~
前回の記事では、詰将棋のルールの基礎中の基礎を紹介してきました。 詰将棋を解くにあたって攻方の手を発見することはとても難しく、...
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク